吹かれて葺かれて、わたしは葦

方法的非方法。徒然なるままに。

意味のない三月十一日午前四時の話

目が覚めているまま、こわい夢を見た。けっして、現実がこわいとか、いやなことがあったということではない。ひとつ、のぞいてはいけないものをのぞいてしまったような後ろめたさが、顎から糸を引いて垂れている。不気味に背の足りない幼子が、母親に抱かれている。あなたもよ。そういってみんなが自分の中へ中へと廻転をはじめる。肉が尽きることなく、ただひたすらに正中線へと呑み込まれてゆく。母も。妹も。熱を出して、豆電球の橙色の隙間からかいまみた景色に似ているのかもしれない。業か。からだの深い深い闇で水滴が震えている。背中を冷やして肩甲骨に固着していく。ああ、目を覚ましておくれ。この今に、どこからか吹き出しているあの黒い煙を吹き消してくれ。そして、その強風にも怯えて断崖に立つぼくを抱きしめておくれ。いつも筒のはしっこにはかなしみとよろこびが綱引きをしていた。ここにいさせてくれ。ここをさわらせてくれ。ふれるまえに。きがふれてしまうまえに。ふるえのすえ、とんでいってしまうまえに。